「90後」や「00後」が遺言状作成 背後にある原因は?

人民網日本語版

少し前、「90後」(1990年代生まれ)と「00後」(2000年代生まれ)が遺言状を作成するようになったとのニュースがネット上で衝撃とともに伝えられた。中華遺言状バンクがこのほど発表した「2020年中華遺言状バンク白書」によると、ますます多くの若者が遺言状を作成するようになった。同バンクに遺言状を登録・保管する「90後」は17年は55人だったが、00年末になると計553人に達したという。若者はなぜ遺言状を作成するのだろうか。「北京日報」アプリが伝えた。

生命の不確実性を冷静に見据える

「20年に遺言状を作成した若者は19年に比べて2倍以上増えた。このデータの大幅な増加は、20年に新型コロナウイルス感染症が発生したことと一定の関連がある。若者の中には家庭や社会などからくる極めて大きな重圧を背負う人もいて、感染症は生活の中の不確実性をあらわにし、こうした若者が遺言状作成を考えて早めに実行せざるを得なくなった」と指摘する専門家がいる。

また医療サービスサイトの丁香医生がまとめた「2020年国民健康調査報告」によれば、回答した人の53%が「自分が突然死ぬことを心配している」と答え、このうちの6%は「しょっちゅう心配している、さらには毎日心配している」と答えた。

不思議なことに、年齢が上がると突然死を心配する割合が低下しているのに対し、「95後」(1995年から1999年生まれ)と「00後」は逆にこの割合がより高く、「95後」は60%、「00後」は58%に上った。

財産の増加と関係

統計によると、これまでに遺言状を作成した「90後」のうち、独立した住宅を所有する人は80%に上った。この80%の中には、両親が購入した不動産を子どもの名義にしているケースが多く、両親の中には自分が保有する株券の一部を子どもの名義にする人もいる。このようなわけで、「自分にもしものことがあっても財産を失わないようにする」ために、一部の若者は早めに遺言状を作成せざるを得なくなった。

これまで、財産を残すといえば、高齢者の専売特許だったが、都市化の推進に伴って、特に一部の若者がかなり早くから自分の不動産を所有するようになり、若者個人がもつ資産の保護がこれからますます重要になるとみられる。

また現在の若者の独立意識とリスク予防意識の高さも、遺言状作成の原動力を高めた。統計によれば、遺言状を作成した人たちの中で「90後」が他の年代と異なるのは、「バーチャル資産」を遺言の内容に組み込んだことで、非常に目立った特色だといえる。たとえばSNSのアカウント、ゲームのアカウントなどが、いずれも「90後」の遺言状によく登場する財産で、次は証券やファンドなどだ。言い換えれば、従来の意味での財産だけでなく、現代の若者はバーチャルな財産をより重視するようになったということだ。

気持ちを托す行為

心理学の「社会情動的選択性理論」を用いてこうした現象を解釈することができる。

「人生の残り時間に対する認識を、十分にあるとするか限られているとするかが、目標に向けて選択を行なう際の評価プロセスに影響する。時間の認識は人の動機を構成する要素で、人の社会的な目標の選択や追求に影響する」。

この理論が私たちに教えてくれるのは、人は将来の時間に対する認識に変化が生じた時、目標の優先順序も変わるということだ。

私たちが未来はまだ無限に長いと感じている時、私たちは仕事、自己実現、自分の価値に気力を使う。将来は長くないと感じれば、より多くの時間を家族、楽しみ、感情的満足に当てることになる。

早くから遺言状を作成するのは、自分がいつかこの世を去ることを想定しているということで、去りゆく自分の気持ちを身近にいる最も親しい人々に托す行為だといえる。遺言状を作成する人々は家族、楽しみ、感情などにより関心を向けたいと考えている。

両親は自分を大きくなるまで育ててくれたが、もしも何かあって自分が両親より先に死んでしまったら、両親の老後は誰が面倒を見るのか、と心配する人もいる。そこで、早めに自分の財産をしっかり分配して備える。両親は子どもの資産がいくらなのか知らないことが多いが、何かあって子どもが先に死んでも、両親は死ぬまで金銭的なサポートを受けられる。

また若者の中にはたいした財産もないが、遺言状を作成するという人もいる。彼らは自分の所有物に自分の気持ちを托し、大好きな本、カメラや写真、手作りの小物などを、遺言状に書き込んで誰かに残そうとする。これは「相互に寄り添う」という形による、人々への形見分けでもある。

また、これまで思い切ってできなかったこと、言えなかったこと、会えなかった人に、最後のメッセージを伝えて、自分の気持ちの整理をつけようとする人もいる。最後のメッセージを遺言状の形で、自分にとって最も重要な人々に伝えるのだ。

若者はこうしたさまざまな行動を通じ、(これに限定されるわけではないが)自分の生きた意味を後世に残そうとしている。