コロナ影響下の卒業シーズン 留学帰国者の就職への道は?

人民網日本語版

帰国した中国留学生(資料写真:提供・新華社)

新型コロナウイルス感染症の影響の下、国際経済情勢は依然として極めて厳しい状況が続いている。海外の企業の中には求人を激減させたり、リストラを始めた企業もある。その影響で、大学を卒業した留学帰国者もその就職活動を調整している。注目されるのは、今年の中国の大卒者は874万人と過去最高を更新したことだ。こうした局面に直面した留学帰国者の就職にかかるプレッシャーはどのようにしたら解消できるだろうか。人民日報海外版が伝えた。

春の就職戦線が長くなる

感染症が最も深刻だった時期に、姜穎さんは、「早くから春の就職戦線に注目してきたが、感染症の影響で、これまで注目してきた会社はここへ来て自らの計画を修正するところが現れた。卒業を迎えた留学帰国者にとって、今年は確かに例年より競争力の高いアピールをしなければ、気に入った仕事を見つけるのは難しい」と話す。

姜さんはまもなく米国のジョンズ・ホプキンス大学コミュニケーション学専攻を卒業し、卒業後は上海に戻ってキャリアアップを図ろうと決めていた。

春の就職戦線に間に合わせ、自分によりふさわしい仕事を見つけるため、姜さんは履歴書をたくさん送り、オンラインでの筆記試験や面接を受けたが、理想的なポジションを手に入れるのは容易ではなかった。「今年の春の就職戦線の全体的な感じは、その戦線が長いこと、感染症の影響が明らかなこと、採用活動のテンポが遅いことだ」という。また姜さんが気に入っていた一部の企業は、感染症が発生すると求人計画を調整し、技術ポジションが中心になって、姜さんの専門とはかみ合わなくなったため、引き続き根気よく就職活動をするしかなくなった。

このほど閉幕した全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)では、「雇用」が注目点になった。姜さんもかねてより国が「雇用の安定」、「雇用の保障」政策による支援を次々打ち出すのに注目し、就職活動への自信を深めてきた。「プレッシャーは確かにあるが、困難に立ち向かう心の準備はしっかりしてきた。確かな実力さえあれば、必ず満足のいく仕事が見つかると確信している」という。

「クラウドサービス」が求職ルートを切り開く

米ジョンズ・ホプキンス大学の修士課程で情報システムを学ぶ路晨さんも今年大学院を卒業する。元々は米国で実習生として一定期間働くつもりだったが、感染症が米国で爆発的に拡大し、感染症が自分の就職活動に与える影響を総合的に検討した結果、計画を変更し、4月末に帰国することにした。

路さんは、「まず安全の問題は必ず考えなければならないということが一つ。中国国内の感染症対策は海外よりしっかりしている。また一方で、感染症の影響を受けて、米国の一部の企業は業務再開のタイムテーブルを延期し続けており、これも確かに自分の就職活動に困難をもたらした。自分は海外にいるが、中国の操業再開と経済社会回復のための一連の政策支援の組み合わせにずっと注目してきた。よく考えた結果、米国で実習生になることをやめ、帰国して実習生の仕事を探し、経験を積みながら次の仕事を探すことにした」と述べた。

雇用の安定と拡大のため、各地が多くの政策や実際的な措置を打ち出し、卒業生の就職を支援している。各地の人的資源・社会保障当局は求職雇用、特定サービス、失業登記などの公共雇用起業サービスをオフラインからオンラインに移した。多くの大学はニューメディアルートを上手に利用して大学の「クラウド求職プラットフォーム」を立ち上げ、大勢の卒業生の就職活動の後ろ盾となった。雇用側は一連の「オンライン春の求人活動」を展開し、今やクラウド求人、クラウド求職、クラウドサービスが主流となっている。オンライン求人は休みがなく、就職サービスには閉店時間がない。これも路さんのような留学帰国者の就職ルートを切り開くことになる。路さんは、「プロセスは思っていたよりも簡単で、中国国内のいくつかの求職アプリに履歴書を送った後で、気に入った実習生のポジションを見つけた。今は入社の準備をしている」と話した。

路さんは、「こんなにスムーズにいくとは思いもしなかった。履歴書を送ったのは春の就職戦線も終わり頃だったが、たくさんの会社がまだゆっくり求人活動をしていた」とした。

また路さんは、「中国国内の仕事環境には安心を覚えている。実習生として就職する会社は、社員に毎日の出勤時に体温を測り、食事の時は距離を保ち、分散して食事するよう求めている。社員は感染症の予防措置をしっかり行った上で徐々に仕事に復帰し、何もかも整然として秩序を保っていた。仕事環境の安全性、発展方向は自分の期待と合っている。数ヶ月前に思い切って帰国を決めてよかった。この決定は正しかった」と話した。

帰国して活躍 勢いのある産業を視野に

米ボストン大学で早期教育を学んだ安■(女へんに亜)さんは、昨年1月に米国で実習生の仕事を見つけ、ハーバード幼稚園の早期教育の教員になった。

安さんは、「この実習生の仕事を探し始めたのは、米国の早期教育モデルを実感したいと思ったからで、仕事の環境を体験できると同時に実践経験を積むこともできた。しかし今は感染症の影響で、家でテレワークするしかない」と話した。早期教育では、オフラインの1対1の教育が経験を積む上でより効果的であることは確実で、テレワークでは実践経験の蓄積が大きく損なわれるため、安さんは強い無力感を感じているという。

安さんが住むマサチューセッツ州では、一部の業界が徐々に再開しているが、安さんは、「楽観できない。いつまで家で待機しなければいけないのかわからない。今は家にいて給料をもらっているが、園長の話では6月末までだという。今の状況で、保護者達がすでに学費を払わなくなってしまったからだ」と話した。

これまで帰国して中国でキャリアアップするかどうか迷っていた安さんは、8月になって自分の受け持つ年長クラスが卒園したら中国に帰ることを決めた。これまで学んできた早期教育の理念と実戦経験を中国に持ち帰るのだという。

安さんからみると、中国の早期教育産業は発展を続ける勢いのある産業で、世界的に有名な幼児教育の理念体系を試している段階で、まだ普及はしていない。このため発展の潜在力は大きいといえる。感染症で家にいる日々の中、安さんは同僚と公式アカウントを立ち上げ、社会活動として教育理念の普及、児童の心理的発達をめぐる早期教育の知識の紹介に取り組んでいる。同時に、中国の早期教育関連の労働環境を早く理解し、準備をしっかり行い、経験を積んで、帰国後の仕事や起業に役立てたいと考えている。