生産能力が5倍になった上海の無人工場

人民網日本語版

開能健康科技集団股フン有限公司(フンはにんべんに分)の瞿亜明副董事長はこのほど、取材に対して、「当社の無人工場の建設は新型コロナウイルス感染流行とは関係なく、2013年には始まっている。コンフォートゾーンに浸っているのではなく、人口ボーナスに頼るのを積極的に止めなければ、企業のコア競争力を構築し、海外の最先端の製造業と競争できないことを早くから認識していたためだ。従来の工場から無人工場に切り替えるというのが大きな流れで、今回の新型コロナウイルス感染流行は、無人工場のメリットがより際立たせただけ」と語った。

同社の公式サイトを見ると、本社の工場は、上海浦東空港工業区内にあり、主に、全館浄水設備や全館軟水設備、商用浄化飲料水設備、逆浸透膜(RO)機などの商品とそのコア部品を生産している。

同社のモデル転換は、政策よりも一歩進んでいる。今月13日に発表された「上海市のオンライン新経済発展を促進するガイドライン(2020-22年)」では、「ベンチマーク的無人工場の建設」が、焦点を合わせる12の重点分野の一つに入っている。

瞿副董事長によると、同社の工場は早くから無人化に舵を切っていたため、新型コロナウイルス感染拡大防止対策実施期間中もずっと工場を稼働させることができ、生産能力が影響を受けることはなかった。それだけでなく、無人工場へ舵を切ることにより、従業員の数を増やさずに、工場の生産能力を5倍に向上させることができたという。「無人工場への舵じ切りは、競争力を継続的に強化するための重要な措置で、世界一流の企業と胸を張って競争することができるようになっている」と瞿副董事長。

無人工場の様子

開能健康の工場内に足を運ぶと、多くの生産作業場における作業が高度に自動化され、生産ライン上のさまざまな型番のロボットが整然と作業を行っていた。現場にいるのは、ロボットを操作する作業員と、検査を行う作業員数人だけだった。

同社のスマート倉庫システムも、生産ラインと生産ライン、生産ラインと倉庫を全て「無人」の形で繋いでいる。原材料の分配から、完成品の梱包・発送まで、全ての工程の運搬がスマート化され、作業員の管理を全く必要としない。

従来の工場から無人工場に舵が切られることにより、作業員も成長している。瞿副董事長によると、以前は流れ作業という体力仕事をしていた作業員は今、ロボットの管理という技術者になっている。「作業員の仕事はそれほどきつくなくなり、仕事内容も単調ではなくなった。そして、給料も大幅に増加したため、作業員の仕事に対する積極性も向上した」。

開能健康の無人工場は、上海に数多くある無人工場の一つに過ぎない。

上汽通用(上海汽車とGMの合弁企業)によると、同社のキャデラック工場の車体工場にはロボットが567台あり、車体の連結などが100%自動化している。

将来を見据えた上海の計画

上海は無人工場の建設の面で壮大な計画を立てており、「ガイドライン」は、無人工場、無人生産ライン、無人作業場を100ヶ所以上設置し、ハイエンド装置、自動車、航空・宇宙飛行、バイオ医薬、電子情報、鋼鉄・化学工業などの業界のスマート化モデル転換を加速させたい考えだ。フレキシブル生産やクラウド製造、シェアリング製造など新製造スタイルに焦点を合わせ、フレキシブル生産能力やデジタル化を下支えする基礎を強化し、速やかに生産能力を高める計画だ。その他、自動感知、自動コントロール、自動決定、自動実行などの機能を備えたスマート製造機構、工業ロボット、倉庫ロボットなどの研究開発を加速させ、自動ロボットの推進、応用を強化し、スマート多層シャットルカーシステムを発展させる計画だ。

万博新経済研究院の滕泰院長は取材に対して、「上海が無人工場の発展に大々的に力を入れようとしているのは、今後の産業のモデル転換・高度化について正確な判断をしているからで、将来を見据えた戦略的計画」と分析している。

復旦大学管理学院の蘇勇教授は取材に対して、「今回、新型コロナウイルス感染流行が突然生じたことと、これまで企業にとってまだまだ遠い先にあることと捉え、積極的に採用することはしていなかった新技術や新たな作業スタイルをこの『ガイドライン』が一気に現実化させたことで、企業はモデル転換により変化することを緊急で求められている」との見方を示した。

滕院長と蘇教授は、「無人工場は今後の製造業の発展の主なトレンドになる」と声を揃える。

滕院長は、「今回の感染状況により、多くの人が無人工場のメリットを目にすることになった。第5世代移動通信システム(5G)、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの技術の発展は既にかなり成熟するようになっており、無人工場の技術を発展させるための準備も整ってきている。今後、無人工場が続々と登場するのは必然的な流れで、多くの欧米諸国も少しずつ無人化を推進している。中国の製造業は今後、無人工場発展のコマンディングハイツを何としてでもゲットしなければならない」との見方を示した。