人民銀がデジタル通貨の内部テスト 人民元の価値下落につながるか

人民網日本語版

1948年12月1日に人民元は誕生した。それから72年が経ち、数回刷新されてきたが、紙幣の形態が変わることはなかった。そして今、人民元はかつてないバージョンアップの時を迎えようとしている。「経済日報」が伝えた。

4月17日、中国人民銀行(中央銀行)デジタル通貨研究所への取材によると、現在、ネットで伝えられているデジタル人民元システム(DC/EP)は技術開発過程におけるテスト内容ではあるが、デジタル人民元の発行が決まったということではない。現時点では、深セン、蘇州、雄安、成都および将来の冬季五輪においてクローズド式の内部テストを全国に先駆けて行う予定だという。

中国版のデジタル通貨とは一体どんなものか。「紙」から「データ」に変わると、インフレを引き起こさないか。支付宝(アリペイ)や微信(WeChat)の決済機能はお役御免になるのか。次の4つの問題を検討してみよう。

問題1:中国版デジタル通貨とは何か?どうやって使うか?

デジタル通貨というと、人々が真っ先に思い浮かべるのはビッドコインかフェイスブックが計画するリブラだろう。

しかしこうした仮想通貨と異なり、人民銀行が発行するデジタル通貨は国家の信用力を担保にしており、人民元の電子版だといえる。そのため法定通貨のような性質をもつと考えられる。

より重要なことは、国家の信用力が担保となるので価値がより安定することだ。それに対して、ビットコインなどの仮想通貨は価値の安定を保証することができないため、価値が下がってたたき売りされることが日常茶飯事になっている。

使用する場面をみると、中央銀行のデジタル通貨には利息は付かず、少額の取り引き、小売、高い頻度でやりとりされるビジネスシーンで使用でき、紙幣と特に違いはない。同時に、使用時には現行の現金管理、マネーロンダリング対策、テロ資金供与対策などに関するすべての規定を遵守しなければならない。

問題2:デジタル人民元のメリットは?

ベテランの業界関係者は、「人民元の現金での決済、取り引き、マネーロンダリング対策などは、現代社会では管理がますます難しくなり、コストもますます大きくなっている。デジタル人民元を発行すれば、こうした問題を効果的に解決することが可能だ」との見方を示す。

同時に、中国版デジタル通貨は決まった銀行口座に紐付けされる必要はなく、従来の銀行口座システムの制約から抜け出している。

このほかネットワーク信号が不調になると、ネットバンキングと決済プラットフォームの決済機能はしばしばマヒ状態に陥るが、人民銀行のデジタル通貨はDC/EPのダブルオフライン技術によって、極端な状況でも紙幣と同じように使用できる。たとえばネットワークがない場面でも、DC/EPデジタルウォレットを搭載した携帯電話2台をかざし合えば、送金や決済を行うことが可能だ。

問題3:デジタル通貨発行はインフレを引き起こすか?

人民銀行が発行するデジタル通貨は、流通する紙幣・硬貨に取って代わるところからスタートし、仮に今流通する通貨を100元(1元は約15.2円)とすれば、デジタル通貨はこの100元との等価交換により創出される。

人民銀行のデジタル通貨の過剰発行が起こらないようにするため、商業機関は人民銀行に同額の準備金を100%積み立てる。言い換えれば、デジタル通貨発行時、まず人民銀行がデジタル通貨を銀行やその他の運営機関に両替してもらい、それからこうした機関が一般の人々からお金を預かってデジタル通貨に両替する、ということだ。

またこれまでデジタル通貨が試行に限られていたことを考慮して、短期間での大量発行や全面的な推進はなく、通貨の流通ペースも正常なレベルを維持する見込みだ。

よってデジタル通貨がインフレを引き起こすことはない。

問題4:支付宝と微信支付の機能はお役御免になるか?

人民銀行のデジタル通貨がインフレを引き起こすかどうかだけでなく、支付宝と微信という「決済手段の双璧」を切り崩すのではないか、との点にも注目が集まる。

消費者として、人民銀行のデジタル通貨による決済と支付宝・微信支付の決済とで、体感的にそれほど違いはないかもしれない。

しかし違いはある。人民銀行のデジタル通貨を使用した場合、支払われるのはデジタル化された人民元であり、現金を支払うのと変わらない。一方、支付宝と微信支付は単なる決済ツールであり、両ルートを通じた決済では、自分の銀行口座の残高から支払うか、クレジットカードで支払うかのどちらかになる。

注目されるのは、人民銀行支払決済司前副司長の穆長春氏が以前、「これから投入される人民銀行のデジタル通貨は一部の機能において電子決済とはかなり違ったものになるだろう」と述べたことだ。

上述した理由でデジタル人民元が支付宝、微信支付に取って代わるかどうか、今はまだはっきりしない。