一般的に新生児の眼の焦点距離は顔から16~24 cmだと言われており、これが12歳頃まで発達、成人と同じぐらいの大きさになります。正確な理由はわかっていませんが、電子機器の利用の増加、外で遊ぶ時間の減少など、生活習慣の変化に伴い、年々近視の子供の割合が増えており、昨年行われた文部科学省の調査によると、裸眼視力が0.3未満だった者の割合は小学校で9.38%、中学校で27.07%、高等学校では38.98%となり、小学校で過去最高となった事が明らかになりました。
近視は今までは病気ではないと思われていました、しかしながら近年の研究により将来的により重篤な目の疾患に陥る可能性があることがわかってきました。では、どのようにして近視は進行するのでしょう。 そのメカニズムには種々の原因が考えられていますが、その一つに遠視性デフォーカスによる眼軸の延長があります。
見えるとは、瞳孔から入った光が網膜に当たり、その信号が脳に伝達されることにより、その形や色調が認識されることを言います。瞳孔から入った光が、網膜より前でピントが合ってしまうのが近視、網膜より後ろ側でピントが合うのが遠視といいます。子供の成長期、特に7~16歳の時に眼軸、つまり目も活発に成長するのですが、その時、瞳孔から入った光が網膜の後ろ側でピントが合っていると、その結果として眼軸が後方に伸長し、結果として近視になると考えられています。
日本以外のアジアやその他の国や地域では、小児期から細かなガイドラインを決め、近視抑制に取り組んでいます。その一方、日本ではオルソケラトロジーや特殊な眼鏡を用いた近視抑制に対する取り組みはなされていますが、近視自身に対する、さらには小児期における近視抑制の重要性に対する認知も十分でないのが現状です。
そのような中、東京医科歯科大学が最先端の知見に基づき近視患者を治療する「先端近視センター」を昨年5月に設立し、11月から本格稼働させたり、眼鏡メーカーが大学とコラボすることにより、新しい近視抑制に効果の期待できる眼鏡の開発に乗り出したり、米国で近視の進行を抑制することが臨床的に証明された最初で唯一の1Day contact lense MiSightが承認されたニュースがネットで話題になるなど、近視進行抑制に対する認識が少しずつではあるが、高まってきています。
近視人口は成長期でもある思春期に特に増加します。近視の進行はPedQLの総合得点、社会的機能、学校スコアを有為に低下させるとの報告もあることから、より闊達な青年期を送るためにも小児期の近視抑制の重要性を認識し、改善することが重要だと考えられました。