2025年一丹賞、複雑系リテラシーと多言語教育の先駆者を表彰

香港、2025年9月29日/ PRNewswire / -- 世界的な教育支援団体の一丹基金が「2025年一丹賞」の受賞者を発表しました。今回の受賞者は、計算論的思考を育む教育活動で知られるユリ・ウィレンスキー(Uri Wilensky)教授と、基礎教育の壁をなくす取り組みを続けるママドゥ・アマドゥ・リー(Mamadou Amadou Ly)氏です。両氏は教育界最高峰の栄誉を受けるとともに、一丹賞受賞者評議会に加わり、研究と実践の垣根を越えて、より良い世界の実現に向けた教育の可能性を探っていきます。

2025年一丹賞 教育研究部門受賞者ユリ・ウィレンスキー教授と教育実践部門受賞者ママドゥ・アマドゥ・リー氏
2025年一丹賞 教育研究部門受賞者ユリ・ウィレンスキー教授と教育実践部門受賞者ママドゥ・アマドゥ・リー氏

教育でより良い世界をつくる変革者たち

一丹賞の審査委員会は、世界中の優れた研究者や実務家の中から両氏を選出しました。教育投資の縮小が懸念されるいまこそ、革新的で実用性の高いアイデアを評価する重要性が強調されています。2025年の受賞者は、基礎的な読み書き能力や科学的な理解を広げることで、子どもたちが教室で主体的に学び、社会の一員として積極的に関われるよう大きく貢献しています。

創設者の陳一丹博士は次のように述べています。「教育は人の可能性を解き放ちます。学び続け、不確実性に対応し、変化する世界で成長する力を与えてくれるのです。世界が発展の転換点にあるいま、私たちは教育への揺るぎない信念を持ち続けます。一丹賞は未来を照らす灯台として、教育を通じてより明るい未来を切り開くことを目指します。」

一丹賞は、教育研究と教育実践の両分野で、未来志向・革新性・持続可能性を備えた変革者に与えられる賞です。ウィレンスキー教授とリー氏には、それぞれ3,000万香港ドル(約380万米ドル)が授与され、そのうち1,500万香港ドルは、教育活動の拡大に使える自由度の高いプロジェクト資金として提供されます。これまでに一丹基金は、世界50か国以上の革新的な教育活動を対象に、総額5億4,000万香港ドル(約6,920万米ドル)を支援してきました。

複雑なシステム理解に向けた探究と知識創造

教育研究部門の受賞者であるノースウェスタン大学の ユリ・ウィレンスキー教授 は、学習科学・計算機科学・複雑系の専門家です。ウィレンスキー教授は「エージェントベース・モデリング(ABM)」の先駆的研究により、複雑系リテラシーを広め、学問領域を横断する知の橋渡しを行ってきました。彼は、気候変動からパンデミック、経済不安定性に至るまで、複雑な現象へのより深い理解を促進するために、無償でオープン・ソース・ツールの「NetLogo」を開発しました。ユーザーに様々な個々の「エージェント」の相互作用がどのように大規模なパターンを生み出すかを示すモデルを探求し構築することを可能にします。子どもから研究者まで幅広く使えるこのツールは、複雑な課題を理解するための"共通言語"として教育現場や学術界で広がっています。

審査委員長のアンドレアス・シュライヒャー(Andreas Schleicher)氏は、「ウィレンスキー教授は、計算モデルを用いて科学や社会を再定義し、学生が複雑なシステムを理解する力を身につけられるよう導いています。これにより、相互に影響し合う現代社会を自らの力で切り開く自信を育めるのです。」と評価しました。

基礎リテラシーと多言語教育による学びの拡大

教育実践部門の受賞者、ママドゥ・アマドゥ・リー氏 は、非営利団体ARED (Associates in Research and Education for Development)の事務局長を務めています。彼のリーダーシップの下、AREDはバイリンガル教育モデルを開発し、就学児・非就学児の基礎的な読み書き・計算能力を大きく伸ばしました。子どもが理解できる母語と学習が必要な言語を組み合わせることで、学びの効果を飛躍的に高め、スケーラブルな教育モデルを西・中央アフリカに広げています。教材はオープンライセンスで公開され、誰でも自由に利用できます。さらに、セネガルやモーリタニア、ガンビアなど各国の教育政策にも取り入れられ、地域社会に根ざした実践として広がりを見せています。

教育開発部門の審査委員長を務めるドロシー・ゴードン(Dorothy Gordon)氏は、リー氏の取り組みが教育の公平性と多様性の推進において、世界的に大きな意義を持つと評価しました。同氏は、「リー氏の先駆的な多言語教育の取り組みは、学習者に読み書きや学ぶ機会を与えるだけでなく、言語や文化の多様性も守ります。こうした取り組みは、包摂的で公平な学習環境づくりを進め、アフリカはもちろん世界の教育改革にも大きな刺激を与えています。」と述べました。

受賞者は来る12月6日、香港で行われる授賞式で表彰される予定です。これに先立ち、12月5日と6日には年次サミットが開かれ、教育の未来をテーマに議論が交わされます。なお、2026年の一丹賞候補者推薦は2025年10月から翌年3月まで受け付けられる予定です。

一丹基金について

一丹基金は「教育を通じてより良い世界をつくる」ことを使命とする国際的な慈善団体です。賞の授与や革新者のネットワークを通じて、人々や社会を前向きに変える力を持つ教育のアイデアや取り組みを支援しています。

一丹賞は世界最高峰の教育賞であり、教育の理論や実践に大きく貢献した個人やチームを顕彰します。「教育研究賞」と「教育発展賞」の二部門から成り、両賞は相互に補完し合う形で設計されています。受賞者には、3年間で1,500万香港ドルのプロジェクト資金(使途に制限なし)が提供され、活動拡大を後押しするほか、金メダルと1,500万香港ドルの賞金が授与されます。チーム受賞の場合は、プロジェクト資金と賞金が均等に分配されます。

詳細yidanprize.orgをご覧いただくか、media@yidanprize.orgまでお問い合わせください。

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