人民網日本語版
推理ゲーム「マーダーミステリー」のシナリオライター、運転代行のドライバー、フリーのライター、ラジオのパーソナリティといった職業を、ランダムに組み合わせて複数こなしている現代の若者がいる。こうした複数の職業をもつ人は、「スラッシャー」と呼ばれている。今年のメーデー連休期間中、スラッシャーたちはのんびり過ごしてはいなかった。シナリオを書いたり、個人メディアの制作をしたり、楽器の練習をしたり……新しいことに挑戦し、さまざまな発展の道を探り、関心や趣味をさらに発展させようとした。「武漢晩報」が伝えた。
新興職業に引きつけられて「スラッシャー」になる若者
メーデー連休中、四喜さんは「マーダーミステリー」の3本目のシナリオの執筆を開始したと同時に、関連コンテンツのインキュベーターの構築準備を始めた。シナリオスタジオを立ち上げ、シナリオを書いてみたいプレイヤーやライターにアイディアを形にする場所を提供するという。
1993年生まれの四喜さんは、武漢で最も早く「マーダーミステリー」のプレイヤーになった一人で、今はそのシナリオを書くのが本業だ。この業界に入って3年目になった彼は、これまでに2本を制作し、1本を監修し、制作した「北国の春」はプレイヤーにとても人気があり、今では年収が100万元(約1700万円)に上るシナリオライターになった。
四喜さんはアナウンス専攻の出身で、ラジオ局や出版社などで働いていた。最初は「マーダーミステリー」の熱狂的なファンになり、しょっちゅう友人と連れだって遊びに行っていた。たまたまある偶然の機会で、シナリオを書いて副業にするということを思いついた。仕事をしながら、空いた時間を利用して研究を重ね、ついにスラッシャーになった。1年間頑張り、最初に書いたシナリオが「マーダーミステリー」の発行元に好評だった。
四喜さんは、「『マーダーミステリー』のストーリーは文学の創作と異なり、プロットの設定、リズムの把握、手がかりのつながり、ロジックのつながりをどう設計するかなどは教えることができる。2本目が成功した後、シナリオスタジオのアイディアが生まれた。周囲にシナリオの書き方を勉強したいという人はたくさんいるが、頑張り続ける人は少ない。この世界に踏み込んでみると、実際にはそんなに面白くもないし、利益の出ない期間も長く、続けていくのは難しい。自分がやりたいことはシナリオを志す人たちを支援し、彼らが書きたいものを形にする手伝いをすることだ」と述べた。
また四喜さんは、「さまざまな新興職業がたくさん出てきて、より多くの柔軟に働ける副業が若者の選択肢になった。こうした副業はそれほど時間を取らず、場所も資本金も必要ないし、その登場で若者のスラッシャー化が進んだ。しかも現在の若者の職業観は非常に自由で、1つの仕事を一生続けなければならないとは考えていない。自分の周りにもたくさんのスラッシャーがいて、自分と同じように副業がだんだん本業になる人もたくさんいる」と述べた。
忙しいが充実しているスラッシャーの生活
5月5日、陳静さん(30)はメーデー連休後のカリキュラムの準備を始めた。湖北省荊州市出身の陳さんは、財務関連の企業での仕事が本業で、副業として週末を利用して大学で代講教員を担当し、会計などの専門的な知識を教えている。最初の頃は学生は10数人だったが、今では大体いつも満席で、「非常に達成感がある」という。
陳さんは、「自分の周りにいる友人も複数の肩書を持つ人が多い。本業の合間に、書店やミルクティ店を経営している人もいれば、夜に仕事から帰ると順風車(道すがら相乗りさせるライドシェアサービス)のドライバーをする人もいる。起業や兼業で何かしてみようという人、興味や趣味を踏まえて兼業してみようという人がより多く手に入れるのは精神的な満足であり、自分の価値が認められた、向上したという感覚だ。生活のために兼業する人が手に入れるのはストレスの軽減や暮らしの中でのより多くのゆとりだ。目的が何であるにせよ、成長できることは確かだ」と話した。
事業機関で働いている何維さん(仮名)は、春節(旧正月、今年は2月12日)の前に同級生たちと集まり、アルコールが入ったので運転代行を頼んだ。そうしてドライバーと話をするうちに、兼業でドライバーをしていることがわかった。「すこく若い子で、本業の仕事がある日はいつも退社後に代行の依頼を受け始め、一晩で平均5-6件の依頼を受けるそうだ。またSNSを通して、最近は微商(微信<WeChat>を利用して販売や宣伝する電子商取引を行う人)が増えたと感じる。微信のアカウントを開設して、自分の所属する業界について発信する人もいれば、人気の分野について書いたりする人もいる。たとえば株式について議論したり、子育ての心得について交流したりする」という。
不動産会社で働く李念さん(仮名)は、「スラッシャーになると発展の可能性をより多く探ることができる」と話す。書くことが好きな李さんは、余暇に公式アカウントを立ち上げて作品を発表し、今では相当な数のファンがおり、広告収入もいつも入るので、最近はこちらを本業にしようかと考えている。李さんは、「思いついたらやってみるといい。もしかしたら成功するかもしれない」と常に話している。