AIゴールド・ラッシュ?アジア太平洋地域を対象とした新たな調査で、AI先行者と追従者の間の大きなギャップが明らかに

  • AIの先行者たちは、戦略、スキル、ガバナンス、信頼へのアプローチを通じて差別化を図っています
  • アジア太平洋地域の組織の40%は、AI投資で少なくとも3倍のROIを期待しています
  • 2028年までにこの地域全体で1100億ドル以上がAIに投資される予定です

シンガポール、2024年10月23日 /PRNewswire/ -- 「IDC Data and AI Pulse:Asia Pacific 2024(IDCデータとAIの動向:アジア太平洋地域2024年)」調査(SASが委託)によると、アジア太平洋地域(APAC)の組織はAIの波に乗ろうと急いでおり、ほぼ半数(43%)が、今後12か月以内にAIへの投資を20%以上増やす計画を立てていることが明らかになりました。組織がAIに多額の投資を行っている一方で、自らをAI先行者と見なしているアジア太平洋地域の企業はわずか18%にとどまっており、長期的な変革を推進するAI先行者と、多数のプロジェクトを試しながら明確なAI戦略を欠いているAI追従者との間には大きなギャップが残っています。

調査対象者のうち、AI先行者は、AIイニシアチブによるビジネス上の最大の成果として、新たな収益の成長(32%)、業務効率の向上(31%)、利益の増加(26%)の促進を挙げています。これに対し、AI追従者は、顧客サービスの向上(27%)、市場シェアの拡大(25%)、市場投入までの時間の短縮(25%)を主なビジネス成果として挙げています。

「AI先行者とAI追従者の目標成果の差は、明確な戦略とロードマップが欠如していることを示しています。AI追従者が短期的な生産性ベースの結果に焦点を当てているのに対し、AI先行者はそれを超え、より複雑な機能や業界のユース・ケースに視点を移しています」とSASのアジア太平洋およびEMEA新興地域担当上級副社長、Shukri Dabaghi氏は述べています。

「企業がAIの革新的な潜在力を活用しようとしている現在、ビジネス・リーダーは、AI先行者とAI追従者の違いから学ぶことが重要です。『ゴールド・ラッシュ』的な考え方を避けることができれば、信頼できるAIとデータ、プロセス、スキルの能力に基づいた長期的な変革が実現します」とDabaghi氏は述べています。

「『IDC Data and AI Pulse: Asia Pacific 2024』(IDCデータとAIの動向:アジア太平洋地域2024年)調査は、アジア太平洋地域の何百もの大手組織がAIの採用と実装にどのように取り組んでいるかを示す重要なスナップショットであり、業界全体の先行者と追随者の姿を浮き彫りにしています」と語るのは、IDCアジア太平洋地域のデータ・分析・AI・持続可能性・業界調査担当副社長、Chris Marshall氏。「ここに記載されている知見により、AIの導入を成功させる上での障壁を明らかにする機会が得られ、企業はゴールド・ラッシュに巻き込まれることなく、これらの新しい新興テクノロジーに賢明な投資を行うことができるようになります。」

生成AIAIの道のりの一部に過ぎない

AIに関する過剰宣伝の多くは生成AIに焦点を当てていますが、調査で明らかになったのは、組織が予測型および解釈型のAIテクノロジーに投資していることです。2023年には、生成AIはAI投資のわずか19%を占めていましたが、2024年までに34%に増加し、これら3つのAIカテゴリの配分がより適切なバランスになると予測されています。

IDCの最新の支出ガイドによると、アジア太平洋地域におけるAIの支出は2024年に450億米ドルに達し、2023年から2028年にかけて24%のCAGRで成長しながら、2028年までに1,100億米ドルに達すると見られています。[1]

調査では、2024年の生成AI投資の増加に向けて組織が予算を再配分していることが明らかになっており、3分の1がインフラの近代化から、37パーセントがアプリケーションの近代化から資金を再配分して賄うと答えています。

ROIという話題になると高まる期待

今回の調査では、AIの潜在的な投資収益率に対する過大な期待によって、このゴールド・ラッシュが引き起こされていることが明らかになっています。調査によると、調査対象となった組織の40%が少なくとも3倍の投資収益を期待しており、AIへの支出を促している要因が「取り残される恐怖」であることがわかります。その結果、投資とその結果やビジネス価値の間に明確な整合性がないまま、AIが導入されているケースがあるという調査結果が出ています。

43%の組織が、今後12か月以内にAIへの投資を20%以上増やすと回答していますが、こうした戦術的投資の見返りが予想ほどではなかったために、組織がAIに幻滅するリスクがあります。ビジネス・リーダーは、AI機能の構築には時間がかかり、長期的な付加価値を確実に得るには強固なAI基盤が求められることを認識する必要があります。

「消費者が生成AIツールに触れると、AIが魔法のように感じられますが、それを企業環境に統合するには多くの作業と適切なインフラストラクチャが必要であり、AIツールに寄せられる高い期待は、得てして非現実的な場合があります」とDabaghi氏は述べています。「これらの落とし穴を理解しておけば、問題にどのように対処するかを学ぶことができます。そうすれば、AIの導入と実装の成功率を高め、ビジネス目標を達成できるようになります。」

複数の業界にまたがるAIの動向

今回の調査では、銀行、保険、医療、政府部門などの主要な領域を中心に、AIがアジア太平洋地域のさまざまな業種にどのような影響を与えているかを詳細に分析しています。

業界を問わず、AI の導入と実装を成功させる上で、スキルのギャップが一貫した課題となっています。このスキルギャップを最も顕著に感じているのは医療業界(41%)で、そこに続くのが政府部門(38%)、保険業界(32%)、銀行業界(29%)です。この課題にもかかわらず、これらの業界は、データとAI機能の向上に投資を続けています。その目的は、意思決定の一層の合理化、より高度な自動化、新製品や新サービスの市場投入までの時間の短縮、コスト削減、その他多くのメリットを実現することです

それでも、いくつかの事例は、一貫性を持ってうまく展開されています。たとえば、銀行業で最も成功しているAIの事例として、流動性リスク管理、資産負債管理、金融犯罪分析の3つが挙げられます。保険業界では、保険金請求詐欺、商品のオムニチャンネル配信、インテリジェントな価格設定などでAIが活用されていることが調査で明らかになっています。医療分野では、注目すべき事例として、医療詐欺への対応やコスト抑制が挙げられます。さらに、政府分野では、社会保障プログラムの整合性の確保、緊急対応のサポート、税金や歳入のコンプライアンスにAIが広く用いられています。

AI導入の傾向は国によって異なる

アジア太平洋地域におけるAIの状況は国によって異なり、市場ごとに独自の導入傾向が見られます。AIへの投資において先頭を走っているのは中国で、今後12か月間でAIプロジェクトが大幅に増加すると予想されています(59パーセント)。それに続くのが、インド(51パーセント)と日本(46パーセント)です。さらに、中国と韓国は、他の国よりもAIの導入と統合が急速に進んでいます。この差は、投資レベル、規制の枠組み、AIの人材とインフラストラクチャの有無などの要因によって生じます。日本、オーストラリア、韓国、そして東南アジアの多くの地域で、熟練した人材の不足が国家と産業の懸念事項となっています。

今回の調査では、今後数年間にアジア太平洋地域全体でAI投資が増加することによるチャンスと課題がくっきりと示されました。調査内容が示唆しているのは、AIの潜在能力を最大限に引き出すために、企業は社内スキルを開発し、戦略的な事例の強力なポートフォリオを構築し、AIのコストとリスクを最初から計画に組み込んでおかなければならないということです。そうすることで、一部の収益向上を確実に達成し、将来のAI投資に対する信頼を高めることができます。

報告書の全文は電子書籍(Data and AI Pulse: Asia Pacific 2024)でご覧いただけます。

方法論

この調査は、2024年6月に実施されました。アジア太平洋地域の8つの市場(オーストラリア、中国、インド、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、タイ)の経営幹部509名が参加し、銀行・金融、製造、政府、ヘルスケア・ライフサイエンスのさまざまな組織が対象となっています。そうした各組織のリーダーを対象に、AIへの投資決定、AIを組織に役立てる方法、導入の課題、信頼できるAIの成果を達成するためのプロセス管理のアプローチについて調査しました。

SASについて

SASは、データとAIの世界的なリーダーです。SASのソフトウェアと業界固有のソリューションにより、組織は、データを信頼できる意思決定に変えています。SASは「THE POWER TO KNOW®(知る力)」をお届けします。

[1] IDCの「Worldwide AI and Generative AI Spending Guide(世界全体のAIおよび生成AI利用のガイド、20248月)