【東京2024年2月29日PR Newswire】 希少疾患は、比較的少数の人しか罹患しないため、歴史的に見過ごされてきました。
世界には特定や対処の方法は異なりますが、6,000を超える希少疾患が知られています。これらの疾患は、幅広い障害と症状を特徴としており、疾患ごとだけでなく、同じ疾患の患者間でも異なります。そのため、症状の変化や特異な症状は、しばしば潜在的な希少疾患を覆い隠し、誤診や治療の遅れを招きます。
希少疾患の最大90%は、重篤または生命を脅かすとされ、95%は治療の選択肢がないため、罹患した人は慢性、進行性、衰弱性の症状に悩まされる生活を送りながら、多くの場合、何年もの間、答えや支援を得られずにいます。
毎年2月の最終日は「世界希少・難治性疾患の日(World Rare Disease Day)」とされており、気づかれないことの多い症状を抱えて生きる3億人以上の人々やその家族、介護者のための啓発活動が世界中で行われています。
順天堂大学難病の診断と治療研究センターの岡﨑康司教授とそのチームのような研究者にとってこのような日は、希少疾患を抱えながら生きる患者さんたちに遺伝学を通じて答えを見つけ、診断、治療、社会的ケアへの公平なアクセスの実現に向けた長年の努力を称える機会でもあります。
岡﨑教授は「実は、希少疾患の72%は遺伝子が原因です。私たちの研究は、難病の原因遺伝子を特定し、その情報を治療法の開発に役立てることです」と語っています。
当初は循環器専門医だった岡﨑教授のキャリアは、1990年代初頭の大学院在学中に大規模なヒトゲノムプロジェクトが始動したことで一転。「当時は、誰もが月面着陸に次ぐ人類の偉大なプロジェクトだと話していました」と彼は振り返ります。「遺伝学には人間のあらゆる病気の理解を解き放つ力があり、私はそれにできるだけ近づきたかったのです」
ハムスターの心筋症の主要遺伝子のマッピングという5年間の優れた研究と、横浜の最初の遺伝子研究センターでのマウスcDNAの解析の仕事を終えた岡﨑教授は、ヒトの病気に関係する研究を行う決意をしました。こうしてミトコンドリア病をはじめとするさまざまな希少遺伝性疾患の原因遺伝子の探索に専念するようになった場所が、埼玉医科大学ゲノム医学研究センターでした。
岡﨑教授は「出生時の計算では、ミトコンドリア病の罹患率は、約2,000人に1人ですが、1,500人から5,000人に1人まで様々な推計があります」「年間約100万人という現在の日本の出生率を考えると、毎年約200人の症例があり、その結果、年間200人から300人の患者さんがいることになります」と説明します。
最も一般的な先天性代謝疾患であるミトコンドリア病の最も重篤なタイプは、主に小児期に発症します。成人してからの発症は、ミトコンドリアDNA異常を伴うことが多く、ストレスなどの要因が引き金となり、精神症状、心筋症、発作、腎臓や肝臓の機能障害、難聴などを引き起こすこともあります。
岡﨑教授は「ほとんどの遺伝病の原因遺伝子は1つか2つですが、ミトコンドリア病には約1,500の原因遺伝子があると言われています。」「私たちのチームは、2,000以上の症例を解析して得られたデータを基に、ミトコンドリア病遺伝子パネルを用いたシーケンシング・プラットフォームを開発しました。現在では、患者さんの核DNAおよび全ミトコンドリアDNAから遺伝子の塩基配列を決定することで、サンプル中の367の原因遺伝子をスクリーニングできるようになりましたが、そのうちの13の遺伝子は私たちが発見したものです」と言います。
MGIの高精度で信頼性の高いシーケンスツールによる全ゲノムシーケンシング、RNAシーケンシング、機能解析を活用し、順天堂大学の岡﨑教授とそのチームは、ミトコンドリア病の原因遺伝子を一括してプロファイリングし、遺伝子診断の効率を向上させました。同時に、より正確な遺伝子診断だけでなく、驚くべきことに、偏見を打ち消すのにも役立つ、よりきめ細かな知見が得られたのです。
岡﨑教授は「昔はミトコンドリア病は母親から遺伝すると考えられていたので、診断が出るたびに母親は罪悪感を感じ、家長である男性の両親は「劣った血」を一家に持ち込んだと母親を責めました」「しかし、詳細な遺伝子解析の結果、小児期の発症例の75%に核遺伝子異常が関わっており、異常遺伝子の出現には両親が共に関与していることが判明しました」と語っています。
「ミトコンドリア病が原因で悲劇的な死を遂げた子供を持つ、ある患者支援団体の女性が『遺伝子診断のおかげで、病気の原因が偶然に両親が異常な遺伝子を提供した結果であることを知りました。わが子が診断された時、それまで耐えてきたあらゆる非難から解放された気がしました』と話してくれたのを覚えています。」
ハイスループットのDNBSEQ-G99*シーケンサーを備えた同センターは、2020年から日本でも医療保険の適用対象となったミトコンドリア病をはじめとする希少疾患の遺伝子検査に対応できるようになりました。また、疾患サーベイランスの費用も保険の対象となったことで、疑わしい症例のスクリーニングをより広範囲に行う際に支援されるようになりました。これにより診断の精度向上に道が開かれることになりました。
岡﨑教授は「MGIの装置を使用する主な理由は、高品質のデータと高いコストパフォーマンスです」「患者1人当たり400近い原因遺伝子を検査するには、非常に高いコストと技術力が必要になります。MGIの精度の高さ、スピード、費用対効果は、私と私のチームが、希少疾患に罹患している人々にタイムリーかつ正確な診断をする自信を与えてくれ、彼らや彼らの愛する人々の不安やフラストレーションを軽減するのに役立っています」と語っています。
希少疾患を抱えて生きる人々の公平性を高めることは、ヘルスケア分野の多くの支持者の優先事項です。100ドル以下でヒトゲノムが読めるというMGIの画期的発表をはじめとして、ゲノム配列決定のコストが下がるにつれ、罹患している人々の医療、社会的ケア、診断、治療へのアクセス拡大は実現に一歩近づくでしょう。
岡﨑教授は「シーケンシングの低価格化が進み、検査にかかる時間も短くなってきているので、3年後ぐらいには、より多くの難病患者のゲノムデータに基づくゲノムインフラづくりしようと考えています」「そうすれば、電子カルテを通じて蓄積された患者のゲノム情報やビッグデータで臨床試験を補完するシステムを構築し、最終的には、研究成果を希少疾患に苦しむ人々が受けるにふさわしい実行可能な治療につなげることができます」と語っています。
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