中国、寧波、2022年10月25日/PRNewswire/ -- 太陽光発電(PV)の技術が急速にpタイプからnタイプへと移行するのに伴い、様々なセル技術を用いた製品間での発電量の差が益々注目されています。現在主流なセル技術はPERC、TOPConとHJTです。それぞれに長所、短所がありますが、発電量を比較する研究においてはまだ全世界での応用を前提とした、電池の全寿命を通しての体系的な比較がなされていません。
ライセンエネルギー(Risen Energy Co., Ltd)はこれを受けて、これら3種のセル技術の主要パラメータを収集し、大規模発電所で3種類のセルを用いて25年間のライフサイクルを通して得られた発電量を、世界中の異なる気候の典型として選んだ21の地域や国で測定し、世界各地における発電量利得を比較するマップの作成を試みました。
I. 全世界における発電量利得のマップ(HJT対PERC/TOPCon)
世界的に見てHJTの技術を用いた製品の発電量が高く、PERCと比べると4.37%-6.54%、TOPCon と比べると1.25%-3.33%勝っています。また、HJT製品の発電量は特に高温地域(中東、オーストラリア、米国南部など)で高く、図1.1に示すようにこれらの地域では対PERC比で6%+、TOPConとは3%+の差が出ています。
図 1.1 全世界における発電量利得のマップ
II. モジュールの技術分析
地図上の地域間で見られる発電量の差は主に、温度係数、バイフェイシャリティ、出力低下という 3つの条件によって起こりますが、これには各モジュールの特徴が関係しています。従って、温度係数が極めて安定しており、バイフェイシャリティが高く、電力保存率にも優れたHJTモジュールは、太陽光発電設備において他のモジュールと比較して高い発電量利得や安定した発電量を提供できるのです。
2.1 極めて安定した温度係数
PERCにおける電力温度係数が-0.35%/°C 、TOPConでは-0.32%/°Cであるのに対してHJTのモジュールはより安定した-0.24%/°C です。出力低下はモジュールの動作温度が上がるほど起きにくくなるため、HJTのモジュールの方がPERCやTOPConと比べて出力低下が起きにくい、ということになります。そして図2.1.に示したように、発電量利得は特に、動作環境の温度が高いほど顕著になります。
- 60°C の動作環境では、HJTモジュールの発電量はTOPCon と比べて2.8%、PERC と比べて3.5%高くなっています。
- 65°C の動作環境では、HJTモジュールの発電量はTOPCon と比べて3.2%、PERC と比べて4%高くなっています。
Figure 2.1 PERC/TOPCon/HJT 電力・温度相関曲線
2.2 高いバイフェイシャリティ
もとより左右対称な構造を持つHJTのセルは本質的に両面受光型セルであり、図2.2.で示されるように、現時点で最も高いバイフェイシャリティを誇るセル技術です。同じ応用シナリオのもとでは、バイフェイシャリティが高いほど、裏面の発電量利得が大きくなります。HJTモジュールのバイフェイシャリティは85%程度であり、表2.1.に示すようにPERCモジュールよりも15%、TOPCon より5%高くなっています。
図2.2 HJTセル構造図
表2.1 PERC/TOPCon/HJT モジュールのバイフェイシャリティ
同じ地上大型発電所での応用シナリオを想定した場合、バイフェイシャリティが高いHJTモジュールは、PERCやTOPConのモジュールと比較しての発電量利得が大きくなります。
2.3 優れた電力保存率
3種類のセル技術における出力低下曲線を見ると、25年目の終わり時点におけるHJTモジュールの電力保存率は92%であるのに対して、PERCモジュールでは87.2%、TOPConモジュールでは89.4%となっています。これは、大型発電所のライフサイクル全体を通してHJT製品の出力電力保存率が最も優れていることを示しており、図2.3が示すように、これによってより安定した、比較的高い発電量が得られるようになります。
上記の結果は1年目に2%の出力低下という現在の条件を前提としたものです。従ってセルやモジュールのカプセル化技術や素材が改善されればHJT製品の1年目の出力低下は更に抑えられ、発電量利得も大きくなります。
図2.3 PERC/TOPCon/HJTモジュールの製品保証
ここまでHJTのセルやモジュールに関する簡単な分析結果を示してきました。しかし、モジュールの発電量に影響を与える主な要素は何でしょうか?又、そのインパクトはどの程度でしょうか?ライセンエネルギーは、PVSYST によって更なる解析を試みました。
III. PVSYST 分析
発電量に影響を与える条件を検討するにあたっては、高温と低温での応用という典型的なシナリオを用います。
3.1 低温での応用シナリオ
低温での応用シナリオの舞台としては北緯約45.9°、年間の平均気温4.7°C、水平日射量合計が1347 KWh/m2のハルビンが選ばれました。発電所は、DC/ACレシオが1.25、設備容量が4MW (実際の設計においては若干差が生じています)で、最大限に傾斜させた固定ブラケットと、適切なストリング・インバータを用いるという設計になっています。表3.1に示したように、25年目時点でPERCの発電量に対するTOPCon の発電量利得は3.94%であり、これに対してHJT は7.73%で、更に上回りました。
表 3.1 PERC/TOPCon/HJT の発電量利得の比較
損失を比較した場合、低温環境での応用において発電量に影響する最も重要な要素は、出力低下です。図3.1に見られるように25年目の終わりには、PERCモジュールの出力低下は12.86% (1.6% + 11.26%)、TOPConモジュールは10.6% (0.6% + 10%)、HJTモジュールでは7.87% (1.6% + 6.27%)でした。
図 3.1 低温環境におけるPERC/TOPCon/HJT間の主要な損失の比較
3.2 高温での応用シナリオ
高温での応用シナリオの典型的な例としては、北緯24.4°付近にあり、平均気温が28.5°C、水平日射量合計が2015.1 KWh/m2の、中東のアブダビが選ばれました。発電所は、DC/ACレシオが1.05、設備容量は4MW (実際の設計においては若干差が生じています)で、最大限に傾斜させた固定ブラケットと、適切なストリング・インバータを用いるという設計になっています。25年目の終わりには、PERCの発電量に対するTOPConの発電量利得は4.52%で、HJTは9.67%とこれを上回りました。
表 3.2 PERC/TOPCon/HJT の発電量利得の比較
損失比較のグラフを見ると、高温シナリオにおいては出力低下に加えて動作温度の損失が発電量に影響するもう一つの重要な要素となっています。図3.2に見られるように、25年目の終わり時点で、PERCモジュールの出力低下が12.86% (1.6% + 11.26%) であるのに対してTOPConモジュールは10.6% (0.6% + 10%)、HJT モジュールは7.87% (1.6% + 6.27%)でした。また、動作温度の損失はPERCモジュールで8.31%であったのに対し、 TOPConでは7.26% 、HJT では5.81%でした.
図 3.2 高温におけるPERC/TOPCon/HJT の主要な損失の比較
上記の分析によれば、低温シナリオではモジュールの出力低下が製品の発電量に影響する主要な条件であり、高温では、動作温度がもう一つの主要条件として加わることが分かります。HJTモジュールは極めて安定した温度係数や、優れたバイフェイシャリティ、高い電力保存率を備えています。そのためHJTモジュールの発電量利得は高温地域においては明白であり、低温地域でも比較的高く、同モジュールは太陽光発電システムへより優れた発電量利得と安定した発電量を提供しているのです。