【ニューヨーク2022年7月20日PR Newswire】
*グローバルな共同研究は、報告された宿主細胞指向性抗ウイルス薬創製用ViroTreatモデルの一般化可能性、マスターレギュレーター・タンパク質の役割、他のウイルス性病原体やパンデミック対応への活用を強調
ニューヨークを拠点とするバイオテクノロジー・抗がん剤創薬企業DarwinHealth, Inc.は、抗ウイルス薬創製への新たなアプローチに焦点を当てた基礎論文「ウイルス感染により誘発される異常な複製許容転写プログラムのネットワークベースでの識別と薬理学的標的化用モデル」が2022年7月19日、コミュニケーションズ・バイオロジー誌(ネイチャーの査読付き姉妹誌)のオンライン版に掲載されたと発表した。(https://www.nature.com/articles/s42003-022-03663-8 )
BA.5、BA.2.75など感染力の強いオミクロン変異株が再び急増する懸念が高まる中、Covidのパンデミックは依然として多くの国々で大問題となっているが、ウイルスの複製を阻害する既存薬および治験薬の潜在的治療効果を正確かつ迅速に予測、検証、活用できる抗ウイルス薬創製モデルの開発、導入ニーズは依然として満たされていない。特に、感染した宿主細胞のウイルス感染に対する耐性を上げる抗ウイルス剤、いわゆる「宿主指向性治療薬(HDT)」の識別が重要で、そうすれば、別のメカニズムでウイルスを直接標的とする食品医薬品局(FDA)承認薬の臨床効果を最大化する単剤療法または併用療法として効果を上げられる可能性がある。
こうした背景から、DarwinHealthの研究者とその海外の同僚は、細胞システム全体の中でウイルスハイジャックに対する宿主細胞反応を標的とした抗ウイルス薬の迅速識別用に配備可能な、統合的かつネットワークベースの新たな制御実験モデルViroTreatを導入、検証実験を行っている。具体的には、同モデルは計算と実験の両アッセイを統合し、(a)ウイルス感染によって引き起こされる転写レベルの制御ネットワーク異常(ウイルス・チェックポイント)を識別し、(b)ウイルス感染に必要な宿主細胞の制御メカニズム乗っ取りに対抗し、ウイルスの複製と感染性を阻害できる薬剤を予測する。
研究者らは報告書に、全体として、彼らの方法論で有効性が予測された18の薬剤のうち15(83%)が、細胞の生存率に影響を与えることなく、SARS-CoV-2の複製を有意に減少させたと記した。対照的に、潜在的陰性対照薬として選ばれた12の薬剤は、いずれも有意な抗ウイルス効果を示さなかった。薬剤の評価の優先順位は、適合性が良好な細胞株内での薬剤摂動により実験で解明された状況特異的作用機序に基づいて決められた。この宿主指向性薬物治療モデルは完全に一般化可能で、事実上あらゆる病原体が誘発する宿主細胞ベースのマスターレギュレーター・シグネチャーを標的とした薬剤の識別用として配備可能である。
今回の発表は、SARS-CoV-2やその他さまざまなウイルスの治療法追求のため、効率的で精度の高い方法論を模索している多国間の取り組みの成果で、本グローバルプロジェクトを構想、主導したコロンビア大学システムバイオロジー学部およびフロリダ大学(米国)、ハイデルベルク大学感染症・分子ウイルス学部(ドイツ)、ベルン大学精密医療センター(スイス)、DarwinHealth, Inc.(米国)の研究者らによる国際共同研究の結果である。
フロリダ大学医学部分子遺伝学・微生物学教室の准教授で筆頭著者のSteeve Boulant博士は「従来の薬剤スクリーニング手法は精度の欠如が、世界的なパンデミックに対処するための特定の抗ウイルス薬の設計は許容できないほど長い開発期間がそれぞれネックになっているという難しい背景がある中、われわれが開発したViroTreatモデルは、細胞のウイルスの感染や複製に対する許容度を下げる低分子の宿主を特に標的とするキメラ手法と見なすことができる」「重要なのは、『皿の中のミニ臓器』として機能するオルガノイド培養モデルが最近進化したことで、SARS-CoV-2感染環境で生理学的な実用データの入手が可能になり、その結果、ViroTreatを配備して感染性を低下させる薬剤を迅速かつ予測通りに識別できるようになったことだ。こうした進歩により、インフルエンザを含む新規および既存のウイルス病原体の両方を、わずか数カ月でそれに適したオルガノイドモデルで研究できるようになり、新たな病原体だけでなく、より安全で優れた治療法が必要とされているにもかかわらず対応できていない既存のウイルス性疾患に対しても、重要な新技術を採用したわれわれのツールキットが拡大使用されるようになった」と説明した。
単一細胞解析を応用した抗ウイルス薬創製の精度向上は、同モデルの実験設計の重要な側面だった。DarwinHealthの単一細胞システムズ薬理学シニアディレクターで筆頭著者のPasquale Laise博士は「組織レベルでの分子解析では、感染細胞と非感染細胞の両方が発するシグナルが歪んだり混ざったりしやすいため、単一細胞解析技術の採用は今回の研究にとって極めて重要だった」「このモデルでは、単一細胞解析技術によって感染細胞と非感染細胞を明確に区別でき、それによって、感染した宿主細胞に対するSARS-CoV-2の転写効果を他とは比べ物にならないほど増幅できた。これにより、わがチームは、ウイルスが宿主内で誘発する特定のウイルスチェックポイントの特徴を識別し、具体的には当社独自のVIPERアルゴリズムで評価したタンパク質活性レベルを用いて定量化し、そこからさらに、感染のウイルス乗っ取り期に複製を阻害する薬剤を確実に予測できるようになった」と説明した。
今回の世界的取り組みの結果、従来の抗ウイルス薬創製戦略とは異なる、感染性ウイルスの脆弱性を標的とする新たなアプローチが確認できた。DarwinHealth最高科学責任者(CSO)のMariano Alvarez博士は「今回の研究で、ウイルスの複製を可能にする宿主細胞の乗っ取りは、リボヌクレオチドやタンパク質合成に必要な仕組みを利用したり、生来の抗ウイルス免疫反応を妨害したりするだけではなく、宿主細胞の転写アイデンティティーを制御するメカニズム、特にウイルス複製と共存可能な宿主細胞の表現型の状態を誘導するメカニズムにまで深く関わっていることが明らかになった」「重要なのは、乗っ取られた細胞の転写アイデンティティーを制御するメカニズムが正確に分析可能であると示したことだ。さらに、薬理学的介入により、われわれの予測通り、細胞を事実上、ウイルスに感染しにくい状態に固定できた。この手法は、宿主指向性抗ウイルス薬を効率的に識別するための新たなパラダイムとなる可能性がある」と説明した。
同グループの成功は、コロンビア大学のCalifano研究室で開発された、抗がん剤創薬に特化した技術やモデルを活用することでもたらされた。DarwinHealthの共同創業者でコロンビア大学システムバイオロジー学部教授兼学部長(https://news.columbia.edu/news/deciphering-cancer-messy-and-complex-were-here-it )のAndrea Califano博士は「最も注目すべきなのは、がん細胞や発生プログラムの研究用に開発された方法論が、強毒性感染症の治療薬の優先順位付けに極めて効果的だということだ」「この手法の一般化可能性は、これが、他のウイルス感染症や将来のパンデミックに対する治療の迅速な優先順位付けにつながる可能性があることを示唆している」と強調した。
DarwinHealthの最高経営責任者(CEO)兼共同創業者のGideon Bosker博士は「ウイルス感染に対する宿主細胞指向性治療(HDT)はこれまで、とらえどころのないままだった。実験と計算を統合したウイルス感染の生物学的モデルを使い、感染病原体が宿主細胞に課す制御ロジックの解明と、ウイルスの乗っ取りを促す標的化・再プログラムの両方に成功したのは、われわれの知る限り、今回が初めてだ」「このように、VIPER技術に基づく当社独自の研究開発パイプラインは、バイオ医薬品パートナーが、宿主細胞の転写レベルでの「ウイルス抑制」メカニズムにより、幅広いウイルス感染症に対して治療効果が期待できる新規および既存の薬剤の選別、発見、検証を行う上で理想的な位置にある。さらに、われわれが報告したようなHDTベースの手法は、確認済みの複数の宿主相互作用因子を直接標的とすることで、感染時の免疫回避力を高める、変異株を介したウイルスの変化に対する脆弱性を低減できる可能性もある」と説明した。
コミュニケーションズ・バイオロジー誌で報告されたDarwinHealthモデルは、コロナウイルスやインフルエンザを含む幅広いメカニズムやウイルス病原体を対象とする低毒性かつ確立された薬剤治療を迅速に識別・スクリーニングする方法として使用可能で、直接・単剤介入あるいはプロテアーゼ阻害剤など直接的な抗ウイルス治療の補助アプローチとして効果が証明される可能性のある宿主細胞指向性治療かどうかを識別できる。
Bosker博士は「今回報告したモデルの手法、結果、応用は、薬理学的な標的化が可能なウイルス・宿主細胞間の相互作用を解明するための刺激的かつ実験的なアプローチだと考えている」「ウイルス感染症や新たなパンデミックの観点から、宿主・微生物間の相互作用や創薬の重要テーマに取り組んでいる研究者から幅広い関心が寄せられることを期待しており、そのためには創薬のペースを速め、従来の医薬品開発プロセスに付き物だったコストを削減することが最も重要だ」と付け加えた。
▽DarwinHealth, Inc.(ダーウィンヘルス)について
DarwinHealth:Precision Medicine Therapeutics for Cancer Medicineは、CEOのGideon Bosker医学博士とコロンビア大学システムバイオロジー学部長兼クライド・アンド・ヘレン・ウー化学システムバイオロジー教授のAndrea Califano教授が共同で創業した、「がんの最前線」のバイオ技術に焦点を当てた企業である。同社の技術は、過去15年にわたりCalifano研究室で開発され、コロンビア大学から独占的にライセンス供与されている。
DarwinHealthは、独自のシステムバイオロジー・アルゴリズムを活用し、事実上、全てのがん患者を、治療成果の上がる可能性が最も高い薬剤や薬剤の組み合わせと一致させる。Bosker博士は「逆に、同じアルゴリズムで、ヒトの悪性腫瘍の全スペクトルに対する未知の潜在力のある治験薬や化合物の組み合わせや新たながん標的に優先順位を付けることもできる」「これは、化合物パイプラインの最適化と機序的に実行可能な新たながん標的と、化合物と腫瘍の組み合わせの発見の両方を追求している製薬会社にとって極めて有益だ」と説明した。
DarwinHealthの社是は、システムバイオロジーに根ざした新たな技術を展開して、がん治療の臨床転帰を改善することである。その核となる技術であるVIPERアルゴリズムは、がんの実行可能な新種の治療標的であるマスターレギュレーター・タンパク質の密に結合したモジュールを識別できる。まず、DarwinHealthの技術は、がん細胞の制御ロジックのより根本的かつ深い段階で、創薬可能な標的の体系的な識別、検証をサポート、当社と当社の研究パートナーが、根本的かつより普遍的な腫瘍の依存性と機序に基づく次世代の効能を引き出すことができるようにする。第2に、医薬品の開発と創製の観点から、マスターレギュレーターをベースとする潜在的に創薬可能な新たな標的とそうした標的のアップストリーム・モジュレーターの特定が同じ技術でできる。腫瘍チェックポイントの解明と標的化に重点を置いたDarwinHealthの腫瘍構造アプローチは、ここに、精度重視のがん治療薬の創製と治療を前進させるために最も重要なソリューションとリポジショニング・ロードマップを提供している。
DarwinHealthが採用している独自の精密医療ベースの手法は、同社の重要なコンピューターインフラを共同開発したDarwinHealthのCSO、Mariano Alvarez博士をはじめとする研究首脳が著した膨大な科学文献に裏付けられている。こうした独自の戦略は、コンピューター上、体外、体内の分析データを統合することにより、がん細胞のゲノムワイドな制御とシグナル伝達ロジックをリバースエンジニアリングし分析する機能を活用している。これにより、医薬品資産の正確な開発曲線を解明、加速、検証できるよう設計された完全統合型の薬物特性評価・発見プラットフォームを提供、臨床および商業化の可能性がフルに実現できる。詳細については、www.DarwinHealth.com を参照。
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