ネットゼロ経済を実現するために、急速にクリーンな電化と並行した、「二酸化炭素回収・貯留 (CCUS)」の重要かつ限られた役割

エネルギー移行委員会からの新しい報告 

ロンドン, 2022年7月14日 /PRNewswire/ -- エネルギー移行における二酸化炭素回収・貯留というレポートで、ETCは、今世紀半ばまでに、ネットゼロ経済を提供する上で、ゼロ炭素電力、クリーンな水素、持続可能な低炭素生物資源に加えて、二酸化炭素回収・貯留(CCUS)が持つ補足的な役割について述べています。

Carbon capture, utilisation and storage in the energy transition: Vital but limited
Carbon capture, utilisation and storage in the energy transition: Vital but limited

大規模なクリーン電化は、世界的な脱炭素化のバックボーンとなります。しかし、電化、水素、持続可能な低炭素生物エネルギーの組み合わせにより総排出量をゼロにすることは不可能です。さらに、現在と2050年までの間の累積CO2排出量は、1.5°C気候目標に沿った「カーボン予算」を超えることもほぼ確実です。温度を1.5°Cまで上昇させるには、排出量の極端で迅速な削減と共に炭素除去が必要となります。

そのため、二酸化炭素回収貯留(CCUS)は、エネルギー移行において、3つの不可欠でありながらも限定された役割を果たす必要があります。

  1. 代替品が技術的に限られている分野(例、セメントなどのように、その性質上酸化炭素 が生産される工業プロセス)に対応すること。
  2. 世界の気候目標を達成するために、急速な脱炭素化に加えて必要な炭素除去を提供すること。
  3. また、他の脱炭酸化オプションに比べて経済的に利益が高い、あるいは回収された二酸化炭素が製品にとって有益な材料となる可能性がある一部の分野や地域において、低コストの脱炭素化ソリューションを提供すること。

「低炭素ではあるがゼロ炭素技術ではないため、CCUSは、クリーン電化、水素、持続可能な生物資源と並行して、脱炭素化を行う上で補完的な役割を果たしています。現在CCUSが産業での脱炭酸化において重要ではあるが限られた役割を拡大して果たし、1.5°Cを維持するために必要な一部の炭素除去を提供できるように、政府、企業、投資家による集合的な措置が求められています」と、ETCの議長であるAdair Turnerは述べています。

CCUSとネットゼロへの道

ETCのレポートでは、ネットゼロへの道で実行すべき役割と、それを可能にするために何が起こらなければならないかが評価されてます。主な結論は以下の通りです。

  • 2050年までに世界では、年間7-10 GtのCO2 (今日のCO2排出量の約 18-25%に相当)を回収し、使用または保存する必要があるでしょう。
    -このうち、年間3-5 GtCO2が、産業およびエネルギー用途(セメント、鉄鋼と水素の生産など)においてネットゼロの排出量を達成するために必要となります。ここでは、電気、水素、または低炭素のバイオエネルギーは、脱炭素化のための完璧なソリューションとはなっていません。このCCUSの使用により、石油1日当たり900万バレル(現在より90%低い)および年間2,700BCMのガス(現在より30%低い)の継続的な消費が相殺され、その一方で尚もゼロ排出経済が達成されています。
    -工学的に二酸化炭素の除去を達成するには、さらに年間4-5 GtCO2が必要になります。
  • 強力な規制が確立されていれば、CUSは、技術的に信頼性が高く、90%以上のCO2キャプチャ率を達成し、長期にわたり炭素をしっかりと封じ込めることができます。これは、ネットゼロへの途上で経済的に貴重な役割を果たすことを可能にする費用で達成できます。
  • 現在のCCUSの開発ペースは、必要なものにはるかに及びません。ここでは、CCUSが最も必要な場所についてのこれまでの混乱、不十分な投資、一般的な反対を引き起こしてきた議論が反映されています。
  • CCUSが重要でありながら限られた役割を進められるようにするには、個人投資と公的方針のサポートの組み合わせが必要です。

2020年台の進歩を加速する必要性

現在、約30の施設から年間40Mtの二酸化炭素が回収されています。複数のプロジェクトのキャンセルによって成長が遅れています。その一部は、脱炭素化に向けた他のルートの経済性の改善を反映しているだけでなく、先に進むべき方針と調整の失敗も反映しています。2050年までに十分な容量を達成し、全体的なコストを削減するためには、2020年代初期の導入が不可欠です。特にDACCの成長の多くは、2030年以降に起こると思われますが、この将来の構築を実現するためには、2020年代の大きな発展が必要です。

妥当ではあるが野心的ともいえる展開軌道では、2030年までに、300以上の施設で一連の技術を使用して、年間0.8 GtCO2の二酸化炭素回収容量が達成されるでしょう。これを達成するには、プロジェクト開発時間を短縮し、共有の輸送および貯蔵インフラストラクチャを開発し、投資を増加させるための政府や業界による行動が必要となります。

CCUSへの投資

CCUSへの総投資見積り額は2050年までに最大5兆ドルとなっています。これは、エネルギー移行に必要な総投資の5%未満であり、この期間全体で計画されているグローバルGDPの0.1%に相当します。今後10年間で、投資の大部分(90%)はポイントソース回収、輸送、貯留に費やされる予定で、そのうちわずか10%がDACC関連となります。しかし、DACCへの投資は今後数十年間で増加します。

CCUSコストの大部分は、CO2回収 に費やされ、一般的にはガス流体中のCO2の濃度を反映しています。そのため、CO2を分離するために、高濃度源(化石産業プロセスなど)よりも、さらに多くのエネルギーを必要とする拡散源(空気など)が増えています。民間部門は、インセンティブ(例:炭素価格、低炭素製品)の開発や、産業ハブを介した共有輸送およびストレージインフラの開発において役割を果たしている業界と政府の両方 で、そのコスト の大部分を調達することができます。

「CCUSが脱炭素化のポートフォリオにおける一つの重要なツールであり、クリーン電荷の加速など他の者もあると認識しながら、計画を実現し、今後10年間で回収率の高いCCUSの展開を増加させるには、政府、企業、投資家による即座の行動が必要です。開発時間の削減、強力な規制、より大型の投資、共有インフラ・モデルが、これを実現するために不可欠です」とETCのディレクターであるKettleborough氏は述べています。

2020年代の政府、企業、財務の6つの主要な行動

政府、企業、投資家による集合的な行動は、今後10年間で必要なCCUSの規模を達成する上で不可欠です。2020年代の6つの重要なアクションは以下のとおりです。

  1. 例えば、炭素価格、初期段階の金融サポートなどを通じて、政府と業界のメカニズム(例:低炭素製品の規格、買い手の合併、調達メカニズム)を組み合わせて、必要に応じて規模を拡大することでCCUSの展開を経済的に可能にするために、グリーンプレミアムを克服すること 
  2. 共有輸送パイプラインやストレージサイトなどのインフラストラクチャ開発。 政府や産業 は、大規模経済を可能にするCCUSハブを開発することができます。
  3. サービスとしてのカーボンキャプチャなどの革新的なビジネスモデルの開発だけでなく、高い回収、次世代CCUS技術に向けたR&Dおよび展開サポートを 目標とすること  。
  4. 貯留場所への長期的な責任と、漏洩に関する意義深い罰を与えることで、責任ある確固たるCCUSの開発を確保するために、リスクを調整 および管理すること。
  5. 高いCO2回収率を確保するための規格と規制を設定し、また、透明でベストプラクティスのモニタリングを開発すること。
  6. 明確な戦略的でありながら制限されたCCUSの役割や、パフォーマンスの透明性について明確に述べることにより、低炭素技術 としてのCCUSの適切な役割に対する公的支援を構築すること。

レポート全文は、こちらをご覧
ください:https://www.energy-transitions.org/publications/carbon-capture-use-storage-vital-limited/

エディターへの注記

本報告書は、エネルギー移行委員会の見解をまとめたものです。ETCのメンバーは、本報告書で述べられている議論の大筋を支持していますが、すべての知見や提言に同意しているわけではないことをご承知ください。それぞれの委員が所属する機関は、この報告書に正式に賛同することを求められていません。

ETCの詳細情報はこちらをご覧ください: https://www.energy-transitions.org.

レポートとインフォグラフィックへのリンクについては、
https://www.energy-transitions.org/publications/carbon-capture-use-storage-vital-limited/をご覧ください。 

用語集全体については、レポート全文をご覧ください。

CCUSは、化石燃料や産業用の「ポイントソース」からの排出量の取得にのみ関連している場合が時にあります。ただし、本報告書では、カーボンキャプチャおよび保管技術の形態として、直接エアカーボンキャプチャ(DACC)およびカーボンキャプチャ(BECC)を用いたバイオエネルギーが含まれています。これらの技術はどちらも負の排出を実現し、二酸化炭素除去の形態になっています。

補足の見積りについては、https://drive.google.com/file/d/11SduXXfC9_5S0hceugDxwCh6GtU3AEII/view?usp=sharingをご覧ください。

委員の一覧については、こちらをご覧ください:https://drive.google.com/file/d/1nQOEXhK9NVIrUvQ4E7Wpz1VP_VK5QXtM/view?usp=sharing

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