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東京芸術大学美術館で展示されている莫高窟第57窟の交脚弥勒菩薩像。移動不可の敦煌石窟文化やアートが、日本の人々にとって身近な存在に(撮影・呉穎)。
「みろく – 終わりの彼方 弥勒の世界 −」展が今月11日から10月10日まで、東京芸術大学美術館で開催されている。同展では文化財のスーパークローン技術を駆使して甘粛省敦煌市莫高窟の275窟や57窟などの文化財が復元されている。来場者は、実際に莫高窟に来たかのような気分になり、敦煌文化のムードを肌で感じることができる。人民網が報じた。
スーパークローン技術が文化遺産に息を吹き込む
1650年以上の歴史を誇る莫高窟は、世界において現存している最大規模で、その内容が最も豊富な仏像美術の聖地で、1987年に世界文化遺産に登録された。洞窟内の文化財である彩色塑像や壁画は、土や木材、わらなどで作られているため、月日が経つにつれて、保護がどんどん難しくなっている。
文化財のスーパークローン技術とは、シミュレーション技術とデジタル技術を組み合わせて、文化遺産を本物そっくりに復元する技術だ。その最大の特徴は、流失、破損、消失してしまった美術品を復元したり、紛失してしまったり、不完全、または破損した文化財の修復を試みることができる点だ。東京芸術大学の宮廻正明名誉教授によると、中日双方は、技術協力を通じて、莫高窟の第275窟と第57窟の文化遺産のスーパークローンを製作した。最新のテクノロジーと独自の修復技術を組み合わせ、かつての輝きを再現した。莫高窟第275窟の交脚弥勒菩薩像は、敦煌研究院が提供した3Dスキャンデータとハイビジョン画像をベースにして、実際の洞窟の70%の大きさで立体復元に成功。さらに、破損していた左手と右手の部分も復元し、手軽で、持ち運びしやすい組み立て式の壁面を採用し、様々な角度から見学できる形で展示されている。
莫高窟第275窟の交脚弥勒菩薩像について説明する東京芸術大学の宮廻正明名誉教授。実際の莫高窟の第275号窟では破損している交脚弥勒菩薩像の左手と右手の部分が東京芸術大学のスーパークローン文化財の技術で復元されている(撮影・呉穎)。
莫高窟第57窟のスーパークローン文化財について説明する東京芸術大学の宮廻正明名誉教授(撮影・呉穎)。
スーパークローン技術が敦煌文化の継承に一役
文化遺産は、保護しなければならないと同時に、一般公開したり、共有したりする必要もあるというジレンマを抱えている。社会が発展する過程で、中日双方は、科学技術の分野で協力し、文化財のスーパークローン技術を駆使して敦煌文化の歴史を復元。日本の人々が敦煌文化を理解し、敦煌との距離をさらに縮めることができるようにしている。
宮廻名誉教授によると、美術作品はもちろんのこと、文化の継承も、人々が一層注目すべき点となっている。文化財のスーパークローン技術は、「文化財保護」と「一般公開」の間にあるジレンマを解消し、人々の文化資源に対する注目を高め、理解を深めることができるようにすることができる。宮廻名誉教授は、「日中双方が協力、交流し、世界遺産である莫高窟の復元に成功した。これは、文化遺産を継承するうえで、非常に価値あることだ」と強調する。
同展は東京芸術大学、平山郁夫シルクロード美術館、日本経済新聞社が主催、敦煌研究院が共催。21日には、オンライン国際シンポジウム「 危機迫るアフガニスタン文化遺産 ~『青の弥勒』からのメッセージ~ 」も開催されることになっている。