人民網日本語版
資料写真(撮影・陳張坤/写真提供は人民図片)。
人的資源・社会保障部(省)はこのほど、2021年第1四半期(1-3月)に全国で求人が応募を上回った「最も人材不足」の100職業ランキングを発表した。そこから見える最も明らかな特徴は、製造業は人材ニーズが旺盛で、新たにランク入りした29職業のうち20が製造業と直接関連するものだったという点だ。教育部の情報でも、中国経済の回復により製造業などの関連分野人材ニーズが旺盛になったという。「中国新聞週刊」が伝えた。
製造業の人材ニーズが旺盛
求人が応募を上回ったということは、雇用市場が供給不足の状態にあるということだ。「最も人材不足」はすなわち雇用機会がたくさんあることを意味する。
「最も人材不足」の100職業は、同期の求人数が166万5千人、応募数が60万9千人で、差し引きして105万6千人が不足し、不足数が初めて100万人の大台を突破した。このランキングが発表されるようになってから、過去最多となる。
最も目立った特徴は、製造業の人材ニーズが旺盛な勢いを保っていることだ。新たにランク入りした29職業のうち、7割近くに当たる20職業は製造業と直接関連があるものだった。
このうち自動車生産、チップ製造などに関連した職業の人材ニーズが目に見えて上昇した。例えば自動車生産ラインオペレーターなどは初めてトップ10に入り、自動車部品リサイクル技術者、電池製造技術者、プリント基板製造技術者、半導体チップ製造技術者、電子材料工学技術者などの職業が新たにランク入りした。
このほど人社部が行なった第1四半期の記者会見で、同部中国職業訓練技術指導センターの呉礼舵センター長は、「このことは中国の第1四半期に工業生産が安定して回復し、製造業が順調に成長した状況とほぼ一致する。人的資源市場の動きはある側面から同期の工業の成長ぶりを裏付けている」と述べた。
教育部の情報からも、エネルギー・動力、設備製造、交通・輸送、郵便・宅配便産業に関連する専攻の大学卒業生は就職が順調で、中国経済の回復において製造業など関連分野の人材ニーズが旺盛なことがわかる。
製造業の回復により人材ニーズが旺盛になったことは、短期的な現象か、それとも長期的な好調傾向のシグナルか。
北京交通運輸職業学院の馬伯夷院長は、「旺盛な求人ニーズは持続するはずだ。一部の局部的な産業局面の調整はあるだろうが、国の規模から考えて、製造業のニーズは今後も相当旺盛なはずだ」との見方を示した。
この見方は、中国の工業化プロセスの加速に伴い、製造業大国から製造業強国への転換の過程で、製造業が必ず中国の今後の経済発展を支えるようになり、さらには世界の中で絶えず自身を超越するための必然的なニーズになることも裏付けるものだ。
ブルーカラーの年収はインターネット産業に匹敵 なぜ続く「人材不足」
中智諮詢人的資本データセンターの2020年「第一線ブルーカラー人材不足状況調査研究報告」によると、調査研究に参加した企業のうち、7割近くが人材不足の問題に直面していたという。労働力サイドが製造業で働きたがらないのは、製造業の賃金がものすごく安いからなのだろうか。現状はむしろ反対だ。
中国中央テレビ局(CCTV)のビジネスチャンネルの番組の中で、浙江省慈渓市にある企業の責任者は、「うちは去年の水準から、さらに15%-20%賃金を引き上げた。技術者を一人雇うのに、月収1万5千元(1元は約17.0円)出しても見つかるとは限らない」と話した。
諸曁市(県クラスの都市)は浙江省の工業の強い10県の1つである。4月21日、諸曁市の人力社保局は、企業26社とともに1千人を超えるポジションをひっさげて浙江理工大学で求人活動を行なった。最高で年収80万元というポジションもあり、人気のあるインターネット産業のポジションと比べても遜色ない条件だった。
月収1万元以上、60歳以上でもOK。こんな条件を掲げながら、それでも製造業に人が集まらない理由は何か。「報告」によれば、企業の90%は「ブルーカラーの人材不足の原因は、若い人が第一線のブルーカラーの仕事に就きたがらないことにある」と考えているという。
まず、技術で食べていくブルーカラーが社会的に十分尊重されているとはいえない。こうした差別的な見方は若者の中でさらに深刻だ。次に、「90後(1990年代生まれ)」は自由な働き方をより好み、工場で働くより、宅配便、食品デリバリー、オンライン配車などの新興サービス産業により強く引きつけられる。
「最も人材不足」100職業ランキングでは、宅配便の配達員が8位、ネット予約の配達員が15位だった。若い人の目には「ローレベルでかっこ悪い」と映る製造業は、「滑り止め」の選択肢になるしかない。
すでに19年には、中国の宅配便業務従事者が1千万人を突破し、飲食品デリバリー配達員の総数も700万人を突破した。20年の新型コロナウイルス感染症で、産業間の労働力の移転がさらに加速した。
馬氏は、「大学生の多くには卒業後に需要のあるポジションに行きたがらない、学ぼうとしないという傾向が確かにあり、大学院生の多くがデリバリー配達をしたり、運転代行をしたりという現象もみられる。これは実のところ、高等教育資源全体に対する浪費だ」と指摘した。
こうした現象が実際に社会で引き起こす問題は、働く人の仕事のポジション上の社会的・経済的待遇が十分に重視されないという問題だ。そのため国のレベルでこの問題を重視し、誘導することが必要であり、重視・誘導が多方面で体現されなければならない。
馬氏は、「これは一つのプロセスであり、職業教育を国がより重視するようになり、ブルーカラーの社会的な地位と待遇が調整され続ければ、ニーズのあるポジションに学生が行きたいと思うようになる状況が徐々に実現するだろう」との見方を示した。