旅行業もライブ配信に進出 「フォロワーを育てる」ためだけ?

人民網日本語版

新型コロナウイルスによる肺炎が流行して、旅行業は突然「一時停止」ボタンを押された形になった。ガイドたちは微商(微信を利用して販売や宣伝する電子商取引を行う人)になったり、保険を売ったり、ネット店舗を開設したりしている……中には「ライブ配信パーソナリティ」に転身し、ライブ配信現場で観光地、ホテル、地方の特産品など旅行に関連した商品を販売促進する人もいる。中新経緯が伝えた。

「観光ガイドの半分近くがパーソナリティに転身」

観光ガイドの楊さんは、「今、貴州省内の観光は回復しているが、近場のドライブ旅行が中心で、旅行会社が企画した団体旅行の参加者は少ない。旅行会社は基本的に資本を食いつぶしている状態だ」と話した。最近、ある旅行会社の紹介で、同じように仕事のないガイド達と旅行に関するライブ配信をやってみることにした。研修では「ライブ配信の話術」、「話題の選び方」などのテクニックを学んだという。

ライブ配信現場で商品の実物を紹介するネットで人気のライブ配信パーソナリティと違い、旅行のパーソナリティは現地の歴史や文化の紹介をより重視する。楊さんは、「毎回配信の前に、必ず現地を視察して、自分で回ってみてどれくらいかかるか時間を計り、一部観光スポットの歴史的背景についての資料を読み込むことが必要」と話した。

旅行のパーソナリティはライブ配信でどうやって利益を得るのだろうか。楊さんの説明によれば、「旅行プラットフォームではライブ配信の間、旅行関連商品のリンクを張る。ネットユーザーがクリックして購入すれば、ライブ配信プラットフォームがパーソナリティに一定の割合で手数料を支払う」という。注意して見てみると、楊さんのライブ配信では4種類の貴州1日ツアーへのリンクが張られていた。

楊さんは、「今は商品を売ることが1番重要ではない。現地の風景、文化、特色などを紹介して、注目を集め、観光スポットの知名度を上げ、感染症が収束したら、よりたくさんの人に来てもらうことが主な狙いだ。今は旅行のライブ配信パーソナリティという分野が登場したばかりで、具体的にどんな旅行商品を売るかは重要でなく、より多くのフォロワーが観光スポットに注目するにはどうすればよいかが最も重要だ」と話した。

クラウドで観劇や船遊び

旅行のパーソナリティの中には、観光スポットを紹介するだけでなく、体験型の「クラウドツアー」を実施する人もいて、ネットユーザーたちを「クラウド観劇」や「クラウド船遊び」に連れて行く。4月15日午前、パーソナリティの「夢梅在等■(にんべんに尓)」さんは江蘇省常熟市の沙家浜観光スポットで、カメラを通じて歴史的物語を紹介し、風景やグルメ、伝統の芝居を画面に登場させた。

夢梅在等■は、「みなさんは家から出なくても、私がみなさんをクラウドツアーにお連れします」と言い、1時間50分のライブ配信の中で、カメラを通じて京劇のステージを約10分間、民俗博物館を約15分間、それぞれ紹介し、櫓櫂船に30分近く揺られる様子を配信した。全編にわたり、風景を紹介する合間に「広告」をちょくちょく挟み込んだ。

複数のオンライン旅行プラットフォームのライブ配信現場を見ると、パーソナリティの大半が自然の風景を通して、現地の風土、人情、物語を紹介して、ユーザーの関心を呼ぼうとしている。配信現場には「観光ルートのパック」や「ホテル割引券」だけでなく、「日焼け止め」、「査証の手続き」、「ダイビングのライセンス取得カリキュラム」などの購入先へのリンクも張られていた。

大物がパーソナリティに変身してネットで物を売る

観光ガイドが旅行のライブ配信パーソナリティに変身しただけでなく、旅行業の大物たちも配信現場に登場した。3月23日、オンライン旅行予約サイト大手の携程網を創業した梁建章さんは三亜市のホテルのアトランティス三亜に姿を現し、人生初のライブコマースを開始した。予約販売の割引価格が魅力で、予約注文ボタンが次々に押された。データによると、ライブ配信の開始から30分だけで取引額は100万元(1元は約15.2円)に達し、開始50分には350万元に達し、1時間の配信が終わった時には、1千万元相当の旅行商品を売り上げていた。

ビジネス界の大物が商品を販売することについて、ネットユーザーからは、「旅行業界の大変さがうかがえる」、「低価格か飢餓商法こそライブコマースの重要ポイント」、といった声もあれば、「予約販売の商品を買ったが、いつ利用できるかわからない」という懸念も聞こえる。

旅行のライブ配信は「フォロワーを育てる」ためだけ?

感染症が発生する前にも、一部の旅行会社がネット有名人や旅行の達人による「オフラインのお店紹介」のライブ配信を試みていた。感染症により、より多くの文化旅行系の企業が覚醒し、オンライン旅行プラットフォーム、博物館、観光スポットなど観光産業の垂直型プレイヤーが、オンラインのライブコマースに次々押し寄せたり、クラウド観光による「フォロワー育成」モデルを始めたりした。

業界関係者は、「現在は旅行プラットフォームでは検索が多い割には予約はほとんどないという状態で、今後1年間有効なホテルの予約が多い。今はまだ省内の近場の旅行が中心で、周辺ツアーや郊外ツアーが自由旅行の大半を占める」と述べた。

しかしすべてのオンライン旅行プラットフォームがライブ配信で旅行商品へのリンクを打ち出すわけではない。あるプラットフォームは、オンラインライブ配信業務はフォロワー育成が狙いという。旅行SNSの馬蜂窩旅遊網のライブ配信業務の責任者は、「今年2月に、馬蜂窩はライブ配信業務を試験的にスタートし、毎日大体3回から10回配信している。現在、プラットフォームには1千人に迫る旅行のライブ配信パーソナリティがおり、配信する場所は世界の人気観光地数百ヶ所に及び、毎日100回近く配信している」と話した。

同責任者は、「旅行業界では消費に至る道が一般的な小売産業と異なり、ユーザーは決定までにより長い時間をかける。また旅行商品は往々にして将来のことを前もって購入するという性質を帯びている。そのため旅行のライブ配信の商業化ルートは決して単なるライブコマースではない」と指摘した。

またオンライン旅行プラットフォームのQunar.Comのスタッフは取材に対し、「今年のメーデー連休までに、当社のプラットフォームは旅行ライブ配信の関連業務を打ち出す予定だ」と明かした。