ニンティのチベット高原に咲くモモの花は大自然からのスペシャルギフト

人民網日本語版

ニンティ市工布江達県のモモの木に座っているサル。(撮影・鄧建勝)

中国の5大モモエリアでニンティだけは野生がメイン

「西蔵(チベット)自治区の春は、林芝(ニンティ)市から始まる」という言葉があるように、今月5日、拉薩(ラサ)ではまだ雪がちらつく寒い日が続いていたものの、ニンティにやってくると、山や野にはモモの花が満開になって春を彩っていた。人民日報が報じた。

野生のモモの木の研究に長年携わっている西藏農牧学院資源・環境学院の■震副院長(■は刑のへんにおおざと)は、「ニンティには野生のモモの木が少なくとも300万本あり、樹齢300‐500年の木も少なくない。これは、大自然がチベット高原にくれたスペシャルギフトだ」と話す。

中国の華北平原、長江流域、西北高旱(新疆維吾爾<ウイグル>自治区、陝西省、甘粛省、寧夏回族自治区)、雲貴高原、青藏高寒(青海、チベット自治区、四川省西部)の5つの地域が桃の栽培に適しているが、その中でニンティだけが、現在でも野生のモモの木がメインとなっている。

■副院長は、「ニンティの野生のモモの木は、マツやヒノキに匹敵するほど長寿で、その多くが樹齢100年以上。樹齢600年から700年という木も珍しくない。以前、ニンティのモモの木を平原の地域で栽培してみたこともあるが、長寿という特徴が消えてしまった。チベット高原は冬になると寒さが厳しく、モモの木に害虫がつきにくく、樹齢が長くなる」と説明する。

ニンティの野生のモモの木は、標高2600‐3200メートルの川谷に茂り、中国で現存する野生のモモの木林としては最大の面積を誇る。花々が咲く暖かい春になると、それらの木も花を咲かせ、山や野がピンク色に染まり、絶景が広がる。

「金のなる木」になったモモの木を伐採する人はおらず

ニンティ市巴宜区の▲拉村(▲は口へんに戛)は、モモの木が有名で、村民の家屋の周囲が樹齢100年以上の野生のモモに囲まれている。これまで、村民はその木を焚き木として使っていた。

モモの花と菜の花が「競演」するニンティ市巴宜区布久郷朵当村。(撮影・扎洛)

高原の高木は、土を固めて砂漠化を防止し、地中の水分を蓄える重要な植物体系。過度に伐採すると悪影響を及ぼし、生態にもマッチしない。そのため、2000年から、村では野生のモモの木の伐採が禁止された。しかし、「木にできるモモの実はせいぜい500グラム1元(1元は約15.25円)でしか売れないのに、残しておいて何になるのか」と首をかしげる村民もいたという。

どうすれば村民が伐採しないようになるのだろう?村の党支部は「モモの花見」の観光を打ち出した。すると、思いがけないことに、春になると山や野をピンク色に染める野生のモモの花が、瞬く間にニンティ観光の代名詞となった。昨年、▲拉村のチケット収入だけでも約350万元に達し、1世帯当たりの観光収入は10万元に達した。村党支部の辺巴書記は、「観光収入が増えるようになり、野生のモモの木が当村にとってまさに『金のなる木』になり、誰もそれを伐採しようとは思わなくなった」と誇らしげに語る。

緯度と標高が低いニンティは、チベット自治区で最も早く春を迎える。■副院長は、「今年のニンティのモモの花は、十数年に一度と言われるほど美しく咲きほこっており、その開花時期は最長で1年間にもなる。近年、西北地区は、温暖化で湿度が高くなっており、短期的に見ると、ニンティの野生のモモの木はより美しく花を咲かせるようになり、観光客の快適度も向上し、観光業の前途は明るいだろう」との見方を示す。