上海に新名所、「世界一低いビル」。実は地下が何と16階

(上海佘山世茂洲際ホテル「通称:深坑ホテル」)

世界各地で超高層ビルが高さを競う中、上海で「世界一低いビル」が竣工しました。何でも世界一が大好きな中国人にとって、「世界一低い」も自慢の一つなのですが、実は、このビル、地上部分はたった2階でも、地下が何と16階で実は18階建て。「世界十大奇跡・建築物」と評されています。上海市松江区辰花路5788番地に建てられた「上海佘山世茂洲際ホテル(通称:深坑ホテル)」です。

地下16階、深い穴にあるこの「深坑ホテル」は、かつて炭鉱の廃坑でした。建築期間12年間、建設費20億元(約325億円)を掛けて完成。「地球の傷あと」のような元廃坑が、上海の新しい名所になりそうです。

しかし、何故「深坑ホテル」は建設に12年も掛かったのでしょうか?設計者はドバイのホタルホテルの設計チーム、上海近郊の荒涼とした廃坑の坑道を利用して地面から地下へ逆向きにしたような設計でワールドクラスの高級ホテルを建築するというユニークな設計プラン。実際にはこの設計プランを完成させるだけでもさらに7年掛かっているので構想から竣工まで計19年も掛かっています。

ホテル全体が不規則な岩壁に貼られたような形となるので、建物の強度に不可欠な鉄骨にも傾斜したものや湾曲したものなど特殊な形の鋼管しか採用できないのです。従って、一律に垂直な荷重を受ける一般的な高層ビルに比べ、そもそもが脆弱。鋼管に少しの傷があっても荷重能力に大きく影響し、鉄筋に流し込むコンクリート密度の要求も厳しくなって、強度計算は素人目にも複雑です。実際、強度計算だけでまる1年もかかったとの事です。

ただし、建物のほとんどがすっぽりと地下に埋まったような形になる「深坑ホテル」はマグ二ニュード9の耐震性を誇り、地震津波による川の逆流や集中豪雨の大洪水にもびくともしませんといわれます。建物は防火性にも優れており、万が一火災になっても宿泊客の迅速な避難と救助も可能な設計です。前例のないユニークな形であるがゆえに、浮き彫りになった様々な技術課題を解決するため試行錯誤を重ねた結果、設計建設のプロセスで41個の特許を取得し、その半分以上が新しい発明!となりました。専用ヘリコプターに乗って入り口から深い穴の奥までホテル全容を見下ろすこともできます。

(上海佘山世茂洲際ホテル「通称:深坑ホテル」の全容見下ろす)

この「上海佘山世茂洲際ホテル(深坑ホテル)」の部屋数は336、全室に展望ベランダがついていてベッドに横たわると窓の外に大きな滝が見える設計になっています。最上階ならぬ最底階(地下15階16階)に「地下水底スイートルーム」が用意され、スイートルームからはサンゴ礁と魚の群れが鑑賞できます。地下15階「水底レストラン」からも食事を楽しみながら色とりどりの水底の世界が楽しめます。

(地下15階「水底レストラン」)

「深坑ホテル」は顔認識・WeChatシステムを導入、ルームキーもルームカードも不要です。宿泊客がホテルに着くと、顔をスキャンしてチェックイン。そのあとはレストランの食事も部屋の出入りも全てWeChatと連動した顔認識でOK。ルームの照明、カーテン、エアコンなども全てWeChatでワンタッチ、とても便利です。スイッチを探す手間などは全く不要。Wi-Fi、ルームサービス、領収書、エレベーターの乗り降り、チェックアウトなどなども全てWeChatでOK。

「深坑ホテル」の周辺には、佘山国家森林公園、辰山植物園、上海映画楽園、泗泾古鎮など観光名所も豊富です。日本の皆さんにも是非ともお勧め「深坑ホテル」!

(ホテルの夜景)